
崖の上の大名屋敷から流れ落ちる生活水を受け止める淀んだ溜池、臭い匂いの立ち込める池沿いに並ぶ長屋の様な屋並、そこで暮らす様々な訳ありの人生をそれぞれ短編で描き、それらが静かに束ねられていく。70歳を過ぎたからか一つ一つが染み入る。
その川は止まったまま、流れることはない。
たぶん溜め込んだ塵芥が、重過ぎるためだ。十九の“ちほ“には、そう思えた。
岸辺の杭に身を寄せる藁屑や落葉は、夏を迎えて腐りはじめている。梅雨には川底から呻くような臭いが立つ。
杭の一本に、赤い布の切れ端が張りついていて、それがいまの自分の姿に重なった。
ちほはここで生まれ、ここにそだった。