12/30 20:00~BS1スペシャル『完全版 開戦 太平洋戦争〜日中知られざる攻防〜 』放送です。

弊社が企画制作に参加致しましたBS1スペシャル『「完全版 開戦 太平洋戦争〜日中知られざる攻防〜』、12月30日20:00~(再放送: 1月3日午前8:40~) 放送です。ぜひご覧ください。

中国国民政府を率いた蒋介石の膨大な日記の全貌が明らかになった。日中戦争の国際化を目指したその戦略は、太平洋戦争開戦へとつながっていた。そして、日本の選択とは。 日本はなぜ、太平洋戦争の開戦に突き進んでしまったのか。中国国民政府を率いた蒋介石の膨大な日記や各国の外交史料から、日中戦争を国際化しようと狙った中国の戦略と、アメリカ・イギリスの思惑が交錯し、開戦へと至った舞台裏が明らかになった。さらに、今回、日本陸軍の和平工作の詳細が記された新たな史料を発掘。日中戦争が太平洋戦争へとつながる過程で、水面下で行われていた知られざる攻防の舞台裏を解き明かしていく。

「完全版 開戦 太平洋戦争〜日中知られざる攻防〜」 – BS1スペシャル – NHK

取材制作後記

企画舎GRIT ディレクター 羽富 宏文

 2021年10月初旬。新山代表より「BSの提案、通ったぞ」と告げられた時、急転直下の展開とは正にこのことだと感じた。BS1スペシャル「開戦 太平洋戦争」はもともと2021年8月15日にNスぺで放送したものがベースになっている。ここに、中国通の陸軍参謀・今井武夫の日中和平工作を組み込むことで、番組に厚みを加えることができる。新山代表からそう提案を受け、私が20年間、密かにあたためてきたテーマが世に出ることになった。

 取材のひとつ目の山は、資料の入手だ。報道ドキュメンタリーで最も重要なのはブツと証言に他ならない。今回制作に参加させていただくにあたって、今井武夫が遺した5000点の資料をとにかくいち早く入手し分析しなければならなかった。しかし、そこには高い壁があった。資料を所有するのは三男の今井貞夫氏。Nスぺ制作チームも貞夫氏に接触しており、NHKと自分との覚書を交わすよう求めてきたという。Nスぺ制作チームは資料の希少性に後ろ髪を引かれながらも、貞夫氏との交渉は難しいと判断。泣く泣くあきらめたという経緯があった。

 貞夫氏は実は私の母方の縁戚であった。つまり今井武夫の血を私自身、ひいているのである。日本陸軍の参謀、今井武夫の存在は高校時代から知っていた。祖父がしきりに今井武夫の功績について研究し称賛していたからだ。今一度、今井武夫を世に伝えるまたとないチャンスが回ってきたのだ。

 貞夫氏と何度も交渉を重ね、縁戚であることも手伝って、覚書を交わさずに資料を借り受ける約束を取り付けることができた。今井史料は現在、全て国会図書館に保管されている。貞夫氏と国会図書館の間で寄託契約の交渉がまだ続いているためだ。貞夫氏の所有権を活かす形で、つまり、所有権を持つ貞夫氏が借り受け、さらにそれを私たちが借りるという形で最終的に44点の今井史料をお借りすることができた。

段ボールにぎっしり詰まった史料は宝の山であった。関係目録から文字上で中身・内容を確認していたが、実際に見た史料は、見た目の質感とともに、貴重な歴史の一次史料に成り得る重要なものだと改めて感じた。

今井武夫の写真をはじめ、日記、陸軍の機密資料の数々。今井武夫が、日中戦争を早く終結させるために、いかに日中和平工作に軍人としての生涯を賭けていたかが手に取るようにわかる史料の数々だった。

 この史料にもとづいて何を語るか。番組の構成、ストーリーラインにどうなじませていくか。構成台本作成作業は難航を極めた。取材の詰めが甘く、何度も先生方のもとへ馳せ参じ、教えを請うた。新山代表からは本当に沢山の叱咤激励をいただいた。戦争物の番組制作の醍醐味と同時に、難しさを痛感した。それでもやはり、史料の持つ力は大きかった。これははじめて世に出たかもしれない、貴重な写真。近衛と東條と今井が一緒に写っている。今井武夫、日本陸軍がいかに和平工作に対して真剣に取り組んでいたかということがわかる史料の数々だった。

 BS版の背骨、蒋介石の日記という最上級のお宝を売りにしている番組だけに、それと対をなす存在感を放つ、日本側の資料として今井史料がバッターボックスに立つことになった。「この史料は一級品です」幸いにも、今回、今井史料の分析を依頼した研究者からはお墨付きをいただいた。苦楽を共にした金田一成編集マンからは、今回の今井史料についての核心的な問いをいただいた。「今井さんはなぜこうした史料を保管していたのか。当時だったら破棄処分をしなければならないものばかり。このときすでに日中和平工作について後世に伝えたいと考えていたのでは?」

 今回の番組制作を通じて、新山代表からいただいた格言がある。

「番組はめぐり合わせ 構成は縁」

 この格言をかみしめることができた3カ月だった。今井武夫史料を基にしたドキュメンタリー番組を作りたい―。密かな志を胸にGRITの門を叩き、新山代表に思いを初めて披歴したのはちょうど1年前のことだった。今春から番組提案の機会を探り続けた。しかし、実現までにはまだまだ時間がかかると思っていた。番組制作がスタートした際にも、新山代表はこう語った。「これは我々が取材しているのではない。今井武夫が我々を動かしているんだ」。取材者を20年近く続けてきた中で、史料が語ることの意味をこれほどまでに感じたことはなかった。

 今回、最高のスタッフに恵まれて番組を制作することができた。

 阿部宗平CP、片山厚志PD、野口尚樹照明マン、小玉義弘カメラマン、金田一成編集マン、音響デザインの佐々木隆太主幹、そして我らが新山賢治代表(今回の番組のプロデューサー)に心より、そして厚く感謝を申し上げたい。

本当にありがとうございました。

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