
【書評:文責・桜井彰】
伊予原さん
直木賞受賞、おめでとうございます🎉
昨年から読み始めた伊予原さんの新作短編集。
「夢化けの島」
山口県の大学で助教として地質学を研究している歩美は萩市の沖にある見島に向かう高速船で萩焼の土を探す青年三浦光平と出会う。三浦は茨城県笠間の出身、カメラマンの助手やバーの客引等いろんな仕事をしてきたが、祖先は毛利藩の御用窯の一つ林窯を営んでいたらしい。三浦は父親が目指していた昔の萩焼を作るべく歩美と一緒にその土を探すという話。1200万年前にマグマが噴出して出来たという見島の成り立ちや萩焼の歴史が丁寧に描かれています。
「狼犬ダイアリー」
主人公のまひろは大家の息子盛田拓己と親しく、奈良の山奥でフリーのWebデザイナーをしている。まひろは大手システム開発会社の子会社でシステム開発を担当、潔癖すぎる性格が災いし社内で孤立し鬱病になり退社、神戸の実家に戻り吉野の山中での生活を選ぶ。拓己が狼を見たというので、まひろは拓己と一緒に狼を探すことになる。
「祈りの破片」
主人公の小寺は長崎の村役場の都市計画課に勤務し、空き家対策の担当者。郊外に住む住民から近くの空き家に青白い光が灯り、怖いから何とかしてほしいと依頼がくる。小寺は面倒な仕事だと思いながら現地に赴くと、その空き家には焼けた瓦や石が番号を付され整然と保管されていることを発見する。空き家の所有者を探すうちに所有者は地質学の学者で原爆の被災状況を記録するために沢山の標本を集めていたこと、学者には協力する神父がいたこと、神父の孫が空き家を見にきていたことが判る。
「星隕つ駅逓」
北海道の遠軽町に住む涼子の父親は3代続く郵便局長。過疎化の進行で父親の勤務する郵便局は閉鎖されることになり父親は生きる気力を失っている。そんな中涼子は隕石を発見するが、その隕石に父親が勤務する郵便局の地名が冠されれば父親は元気を取り戻すのではと思い、隕石調査の関係者に発見地を偽って報告する。果たして父親は元気を取り戻すことが出来るのか?
「藍を継ぐ海」
主人公の沙月はアカウミガメが産卵のため上陸する徳島県南東部の阿須町に住んでいる。阿須町の浜には昔は何百頭ものアカウミガメが上陸していたが、堤防が建設されてからは殆ど見られなくなった。子供の頃からアカウミガメに関心を持っていた紗月は浜で見つけたアカウミガメの卵を自分で孵化させようと自宅に持ち帰る。紗月は昔海に戻りそこなった子亀を教師の佐和子と1年育て海に戻してあげたことがあった。
読んだ後「よし、また頑張ろう」という気持ちになれる素晴らしい作品集です。